Texによる数式表現20~微分表記(physics パッケージ)
今回はMathJax3.0のphysicsパッケージの機能のうち微分表記とスペース表示に関するコマンドについて紹介する。
physicsパッケージのマニュアルはhttp://ftp.jaist.ac.jp/pub/CTAN/macros/latex/contrib/physics/physics.pdf
MathJax3.0とphysicsパッケージのロードについては以下に示す。
+MathJax3.0をロードするscript
<script> MathJax = { loader: {load: ['[tex]/physics']}, tex: { inlineMath: [['$', '$'], ['\\(', '\\)']], packages: {'[+]': ['physics']} }, chtml: { matchFontHeight: false } }; </script> <script id="MathJax-script" async src="https://cdn.jsdelivr.net/npm/mathjax@3/es5/tex-chtml.js"> </script> <script src="https://polyfill.io/v3/polyfill.min.js?features=es6"></script> //IE用スクリプト
注:HOMEやTOPページで複数ページ表示された状態では、script同士が干渉してうまく認識できないコマンドがある模様。1記事のみ個別のページとしてロードすれば正しく表示される
(追記2020.09.21): CDNサイトへのプライバシーエラーによりChromeなどで数式表示できない。対策は下記参照
Texによる数式表現37~MathJax, KaTeX表示トラブルの要因・解決 - つれづれなる備忘録
Texによる数式表現38~MathJaxの表示トラブル解決法 - つれづれなる備忘録
1. 微小量コマンド
微小量をあらわすd記号は
$\dd$
→$\dd$でdxは$\dd x
→$\dd x$となりdはローマン体、xはイタリックで表記される。
$f(x,y)\dd{x}\dd{y}$
→$f(x,y)\dd{x}\dd{y}$では、\dd{x}
とするとdxの前後にスペースができる。
$\dd[3]{x}$
→$\dd[3]{x}$とすると体積素量となる。また$\dd(\cos(\theta))$
→$\dd(\cos(\theta))$とすると任意の微小量を表現できる。
変分量については$\var{x}$
→$\var{x}$
2. 微分コマンド
微分コマンドは微小量と分数表記を同時に行う。$\dv{x}$
→$\dv{x}$
表示を大きくしたい場合は\displaystyle
を入れればよい。
$\displaystyle \dv{x}$
→$\displaystyle \dv{x}$
分子に関数を入れる場合は$\dv{f(x)}{x}$
→$\dv{f(x)}{x}$
n階微分の場合は$\dv[n]{f(x)}{x}$
→$\dv[n]{f(x)}{x}$
括弧を加えるとサイズを自動調整する。$\dv{x}(\frac{x^{2}}{2})$
→$\dv{x}(\frac{x^{2}}{2})$
分数をスラッシュに置き換えるには、アスタリスクを加える。
$\dv*{f(x)}{x}$
→$\dv*{f(x)}{x}$
3. 偏微分コマンド
微分コマンドと同様に偏微分のコマンドもある。$\pdv{x}$
→$\pdv{x}$
分子に関数を入れる場合は$\pdv{f(x,y)}{x}$
→$\pdv{f(x,y)}{x}$
n階微分の場合は$\pdv[n]{f(x,y)}{x}$
→$\pdv[n]{f(x,y)}{x}$
括弧を加えるとサイズを自動調整する。$\pdv{x}(\frac{x^{2}}{2})$
→$\pdv{x}(\frac{x^{2}}{2})$
変数が2種類の場合は$\pdv{f(x,y)}{x}{y}$
→$\pdv{f(x,y)}{x}{y}$
分数をスラッシュに置き換えるインライン表示には、アスタリスクを加える。
$\pdv*{f(x,y)}{x}$
→$\pdv*{f(x,y)}{x}$
4. 変分コマンド
微小要素dの代わりに変分量を用いたものもある。$\fdv{g}$
→$\fdv{g}$
分子に記号を入れるには$\fdv{F}{g}$
→$\fdv{F}{g}$
括弧を加えると$\fdv{V}(E-TS)$
→$\fdv{V}(E-TS)$
分数をスラッシュに置き換えるインライン表示には、アスタリスクを加える。
$\fdv*{F}{g}$
→$\fdv*{F}{g}$
5. スペース表示
数式中に\qq{}
を入れると前後にスペースを入れる。例えば$x\qq{or}y$
→$x\qq{or}y$
またアスタリスクを入れると後のみにスペースを入れる。$x\qq*{or}y$
→$x\qq*{or}y$
類似コマンドとしてコンマの後にスペース$x\qc y$
→$x\qc y$
複素共役を示す$z \qcc w$
→$z \qcc w$、
後のみスペースは$z \qcc* w$
→$z \qcc* w$
同様にifを入れるコマンドは$A \qif B$
→$A \qif B$
後のみスペースは$A \qif* B$
→$A \qif* B$
6. まとめ
微小量コマンドはd
をローマン体、それ以外をイタリックに自動変換するため簡易に見栄えをよくすることができる。また微分\dv{}
や偏微分\pdv{}
は微分記号と分数形式を同時に行うコマンドで、従来よりも大幅に入力の手間が省ける。