無線通信インターフェース
1. 無線通信インターフェース
前回、計測機器の通信インターフェースに続き、無線通信のインタフェースについてまとめてみようと思う。
Wi-Fi
無線LANといえばWi-Fiというぐらい一般的に浸透している無線インターフェース。大容量のデータ通信が可能なことが特徴だが、Wi-Fiの規格により通信速度等が異なる。通信範囲はアンテナの種類によるが一般的なルーターだと50m~100mといわれている。ルーター側の出力は日本では10mWまで。家屋の構造・材質(木造か鉄筋か)、電波遮蔽する金属など(棚など)によって通信できる範囲が異なる。Wi-Fiの規格名と通信速度は以下の通り。
規格名/呼称(成立年) | 通信速度 | 周波数帯 |
---|---|---|
IEEE 802.11a(1997) | 54Mbps | 5GHz |
IEEE 802.11b(1999) | 11Mbps | 2.4GHz |
IEEE 802.11g(2003) | 54Mbps | 2.4GHz |
IEEE 802.11n/Wi-Fi 4(2009) | 600Mbps | 2.4/5GHz |
IEEE 802.11ac/Wi-Fi 5(2014) | 6.9Gbps | 5GHz |
IEEE 802.11ax/Wi-Fi 6(2020予定) | 9.6Gbps | 2.4/5GHz |
Bluetooth
もともとはエリクソンが開発し、初期はエリクソン、インテル、IBM、ノキア、東芝の5社でBluetooth SIGを設立して、規格の策定をはじめた。現在ではモバイルPC・スマートフォン等の情報機器間やマウス・キーボード・イヤホンなどの周辺機器との通信に多く使われる無線インターフェース。Wi-Fiよりも通信速度が低く、比較的近距離(10m以内)での通信に使われることが多い。現在の規格はバージョン1からバージョン5まであるが、通信速度の改善の他、ペアリング、省電力化、他機器との干渉、通信の高速化オプション付与がされている。現在は通信速度を重視するBR/EDR(Bluetooth Basic Rate/Enhanced Data Rate)と省電力性を重視したBLE(Bluetooth Low Energy)がある。省電力性に着目してIoT機器などに採用されているケースも多い。なお周波数帯域はいずれも2.4GHz帯。バージョンごとの変遷は以下の通り:
バージョン(発表年) | 主な変更点 | 最大通信速度 |
---|---|---|
1.0(1999) | 最初の規格 | 1Mbps |
1.1(2001) | 普及バージョン | 1Mbps |
1.2(2003) | WiFi等との干渉対策 | 1Mbps |
2.0(2004) | データ量大のときEDR | 3.0Mbps(EDR) |
2.1(2007) | ペアリング簡素化、スリープ時間多い機器(キーボードなど)のバッテリー消耗抑制 | 3.0Mbps(EDR) |
3.0(2009) | 省電力性向上、HS(High Speed)オプション | 24Mbps(HS) |
4.0(2009) | BLEを追加 | 24Mbps(HS),1Mbps(BLE) |
4.1(2013) | BLEの電波干渉、自動再接続、インターネット接続 | 24Mbps(HS),1Mbps(BLE) |
4.2(2014) | BLEがIPv6/6LoWPAN でインターネット接続 | 24Mbps(HS),1Mbps(BLE) |
5.0(2016) | BLEで2Mbps | 24Mbps(HS),2Mbps(BLE) |
5.1(2019) | 方向探知機能 | 24Mbps(HS),2Mbps(BLE) |
通信速度はバージョンで決まるわけではなく、EDR/HSなどオプション対応になっていないと、そのオプションの最大通信速度は実現できない。BR/EDRとBLEは同じBluetoothだが、通信方式が異なるため互換性がない。バージョン4.0からバージョン名とは別にBLEに対応したBleutooth Smart、従来のBR/EDR、BLEとBR/EDRに対応したBluetooth Smart Readyがある。(ロゴは Bluetooth 4.0 に新ブランド " Bluetooth SMART "、センサー互換性を表示 - Engadget 日本版など参照)互換性は以下の通り。
Bluetooth | Smart | Smart Ready | |
---|---|---|---|
Bleutooth | 〇 | × | 〇 |
Smart | × | 〇 | × |
Smart Ready | 〇 | 〇 | 〇 |
なお出力についてはClassが定められておりBR/EDRではClass 1:100mW, Class 2:2.5mW, Class 3:1mWでBLEではClass 1:100mW, Class 1.5:10mW, Class 2:2.5mW, Class3:1mWとなっている。Class 1の出力だと通信距離は100mほどになるが、日本では電波法により出力が10mWに制限されるため、Class 1は使えず概ね通信距離は10m以内となっている場合が多い。(障害物やアンテナ性能により実際には通信できる距離は異なる)
NFC(Near Field Communication)
ICチップをカードに埋め込み、リーダ・ライタ機器で読み込み・書き込みを行う近距離無線通信規格の1つ。Suicaなどの交通系ICカード、Edyなどの電子決済、入退室などの認証などに広く使われている。特徴の1つとして通信速度は低いが、カード側にバッテリーがなくても読み出しと給電(電磁誘導による)を同時に行うことがある。周波数は13.56MHz, 通信距離は10cm, 通信速度は424kbpsとなっている。
LTE(Long Term Evolution)
スマートフォンなどの携帯電話機器用の通信規格で、携帯の基地局を介して通信する。基地局を利用するため屋外含めた広域で通信できるが、利用するには機器の用意の他に契約が必要になる。周波数は提供する通信会社によってことあるが概ね700MHz~900MHz、通信速度は最大で150Mbps。
Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)
電力会社のスマートメータや家庭内HEMS(Home Energy Management System)に採用されている無線規格。周波数は920MHz帯で出力20mWまで(920MHz特定小電力)、通信速度100kbpsだが通信範囲が1km程度になるのが特徴。電力会社が電気の使用量を確認するために、従来はメーターを検針員が目視で確認していたが、スマートメータに置き換えることで使用量を無線で収集できる。(電力会社側が旧来のものから順次置き換えしている。 スマートメーター|Smart life|東京電力エナジーパートナー株式会社)
EnOcean
シーメンスから独立したEnOcean GmbHによって開発された微小発電によって得られた電力を用いるデバイスの無線通信規格。例えば太陽電池や温度差発電、ユーザがスイッチを押したときに発電する機構等によって微小な電力を発電し(エナジーハーベストとも呼ばれる)、その電力によりセンサと無線送信を賄う。事例としては、例えばエネルギーハーベスティング活用|電子ペーパー|凸版印刷などがイメージが湧きやすい。シーテックのような展示会で見かけることはあるが、一般的に出回るようになるにはまだ時間がかかると思う。周波数は日本では928.35MHz, 通信距離は数10mから200m程度,通信速度は125kbps。