Texによる数式表現44~線形微分方程式の解法3
今回はTexによる数式表現方法として、力学でよくあらわれる空気抵抗を考慮した自由落下に関する非斉次2階線形微分方程式の解法について紹介する。
1. 非斉次2階線形微分方程式
斉次微分方程式はすべての項が解くべき未知関数や未知関数の導関数になっており、一方で非斉次微分方程式は未知関数の関する項以外が含まれている。 自由落下の運動方程式で、空気抵抗など速度に比例して落下方向(+x)と逆の抵抗力を受ける運動方程式は
[tex: \displaystyle m\frac{d^{2}x}{dt^{2}} = mg-k\frac{dx}{dt} ]
これは項を並び替えると、
[tex: \displaystyle m\frac{d^{2}x}{dt^{2}} + k\frac{dx}{dt}=mg ]
左辺は未知関数x(t)のみからなり、右辺は定数となる非斉次2階微分方程式になっていることがわかる。
2. 抵抗含む自由落下の非斉次2階線形微分方程式の解
解き方としては右辺が0の斉次2階線形微分方程式の解(一般解)と右辺と同じ関数形となる解を仮定した特殊解に分けて解き、最後に和をとる方法がある。
[tex: \displaystyle m\frac{d^{2}x}{dt^{2}} + k\frac{dx}{dt}=0 ]
の解は、dx/dt≡vとして
[tex: \displaystyle \frac{dx}{dt}=C\_{0}\exp ( -\frac{k}{m}t ) ]
これをさらに積分すれば、以下の一般解が得られる。
[tex: \displaystyle x(t)=-C\_{0}\frac{m}{k} \exp ( -\frac{k}{m}t ) ]
次に特殊解については、右辺が定数となるにはtに関して1次関数ということが想定できる。従ってC1t+C2という1次関数を仮定して、非斉次2階微分方程式に代入すると
[tex: \displaystyle kC\_{1}=mg ]
ここでC1=mg/kということが確定する。ここで一般解と特殊解の和をとった微分方程式の解は
[tex:\displaystyle x(t)=-C\_{0}\frac{m}{k}\exp ( -\frac{k}{m}t )+\frac{mg}{k}t+C\_{2} ]
C0, C2はt=0での初速度と初期位置が与えられると決定される。自由落下の場合は初速度0,初期位置0なので C0=mg/k, C2=m2g/k2ということがわかる。 結局、抵抗含む自由落下の非斉次2階線形微分方程式の解は
[tex:\displaystyle x(t)=-\frac{m^{2}g}{k^{2}}\exp ( -\frac{k}{m}t )+\frac{mg}{k}t=\frac{mg}{k} \left( t - \frac{m}{k} \left\\[ 1-\exp (-\frac{k}{m}t ) \right\\] \right) ]
3. 考察
自由落下の非斉次2階線形微分方程式の解について少し考察をしてみる。まずtが大きい場合、つまり時間が十分経過した場合は指数項は0になり
[tex: \displaystyle x(t)=\frac{mg}{k}t ]
となり等速直線運動になることがわかる。逆にt=0付近で空気抵抗が十分に働かない場合は、指数関数部分をテーラー展開して
[tex:\displaystyle \left( 1-\exp (-\frac{k}{m}t ) \right) \sim \frac{k}{m}t-\frac{k^{2}}{2m^{2}}t^{2} ]
これを非斉次2階線形微分方程式の解に入れると
[tex:\displaystyle x(t) \sim \frac{g}{2}t^{2} ]
これは空気抵抗を考慮しない物体の自由落下の位置と一致する。 物体が落下し始めたときは、速度が小さいため空気抵抗の影響は受けず、時間が経過すると速度が大きくなるが、その分空気抵抗の影響を受けて最終的には等速直線運動になる。
4. まとめ
今回は、力学でよくあらわれる空気抵抗を考慮した自由落下に関する非斉次2階線形微分方程式の解法について紹介した。