つれづれなる備忘録

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大きな数の表現方法まとめ

.1 大きな数、小さな数

 エンジニアリングの世界では、グラフなどに表記する場合、0.001~10000ぐらいまではそのまま表記して、それ以下またはそれ以上は指数表現:1 x 10-4, 1 x 105とすることが多いと思う。(ゼロが並びすぎると読みにくくなるため)一方で日常会話だと、億や兆といった桁までは普通に出てくる。主にコンピュータ関連ではデータサイズをギガバイト(GB)やテラバイト(TB)などで接頭辞を使って表現すると思う。そこで大きな数、小さな数の表現方法を日本語(漢字)(一、十、百、千, )、英語(one, ten, hundred, thousand, )、接頭辞(正式にはSI接頭辞)(kilo, mega, giga, )の関係をまとめようと思う。当初は大きな数と小さな数を同時にまとめようとしたが、記事が長くなってしまったので2つに分けて連続で投稿することにした。

2. 大きな数

 大きな数と表現方法について下にまとめた。

指数 接頭辞 日本語 読み 英語 備考
100 - いち One -
101 da (deca) じゅう Ten -
102 h (hecto) ひゃく Hundred -
103 k (kilo) せん Thousand -
104 - まん - -
106 M (mega) - - Million -
108 - おく - -
109 G (giga) - - Billion -
1012 T (tera) ちょう Trillion HDDの容量
1015 P (pera) - - Quadrillion -
1016 - けい - スパコン京の計算速度
1018 E (exa) - - Quintillion 64bitで扱える数
1020 - がい - -
1021 Z (zetta) - - Sextillion 世界で使用される情報量
1024 Y (yotta) 𥝱 じょ Septillion 接頭辞の最大,アボガドロ数
1027 - - - Octillion -
1028 - じょう - -
1030 - - - Nonillion 太陽の質量
1032 - こう - -
1033 - - - Decillion 量子コンピュータの計算速度
1036 - かん Undecillion -
1039 - - - Duodecillion 巨大ブラックホールの質量
1040 - せい - -
1042 - - - Tredecillion -
1044 - さい - -
1045 - - - Quattuordecillion -
1048 - ごく Quindecillion 地球上の水分子の数
1051 - - - Quattuordecillion -
1052 - 恒河沙 ごうがしゃ - -
1054 - - - Septendecillion -
1056 - 阿僧祇 あそうぎ - -
1057 - - - Octodecillion -
1060 - 那由他 なゆた Novemdecillion -
1063 - - - Vigintillion -
1064 - 不可思議 ふかしぎ - -
1066 - - - Unvigintillion -
1068 - 無量大数 むりょうたいすう - -
1080 - - - 観測可能な宇宙の原子数
10100 - - - Googol Googleの由来
10220 - - - - 将棋の取りうる組合わせ
10107 - - - - 発見されている最大の素数
101037.52 - 不可説不可説転 ふかせつふかせつてん - -
1010100 - - - Googolplex -
10101034 - - - - 第一スキューズ数
101010964 - - - - 第二スキューズ数
3↑↑↑3 - - - - グラハム数(指数での表現不可)

2. SI接頭辞について

 SI接頭辞は国際度量衡総会で決定されており、千(kilo)からは3桁づつ単位が変わり(千進法)指数のかわりに単位と一緒に用いる。(Ex. 1000m=1 x 103m=1km, 1000,000B=1x106B=1MB)上位の桁を扱う分野は、コンピュータ関連でデータサイズだとTB,PB,スパコンの計算速度ではP FLOPSが使われている。科学分野では光の周波数が100THzオーダーで表記される場合があり、あとは1光年が約1016mだが10Pmとは表記しない。現在のところ(1991年制定)一番上の桁はY(yokto)だが、全世界の情報の使用量が一つ下のゼタバイト(ZB)オーダーになっており、今後の情報技術の進展ではもっと上の桁がでてくるかもしれない。

3. 英語について

 英語は千から3桁づつで単位が変わっていく千進法になっており、規則的に-llionの前にラテン語の接頭辞をいれることで上の桁の単位を作っていくことができる。例えば、Mi-llion,Bi-llion, Tri-llion, Quandri-llion, Quint-llion,…など、詳細はHow high can you count?に従って単位を生成することができる。(上の表1066以降も3桁づつ単位を表現できる)一番大きな桁は103003でMillia-tillionとなり肩の桁が3桁あがるごとに、Milliaの数が増えて103000003はMillia-millia-tillionとなる。日本語では、兆まではよく出てる(国家予算や大企業の売り上げ額)が京以上はほとんど使われることがない。例えば、量子コンピュータ 9000兆倍の破壊力 | 日経クロステック(xTECH)は9000兆倍という見出しだが、切りよく1京倍としてもよいが一般的になじみがないので1割引いて9000兆という表現になったと思われる。一方英語の場合は接頭辞を規則的に変えているので、ロジカルに数の把握がしやすいのではと思い、Quadrillionでニュース検索するとJapan household assets hit record ¥1.9 quadrillion at end of year | The Japan Timesなど普通に使われる。(1000兆という数値はたまに出てくることもあると思う)同様にQuintillionだと例えばEl Capitan supercomputer to blow past rivals, with 2 quintillion calculations per second - CNETの記事でスパコンの計算速度を見出しで2 quintillion calculation per secondと表現して、記事の中身で 2 exaflopsとしているので、おそらく米国ではquintillionの方がわかりやすいということだと思う。

4. 日本語について

 日本語は1万から4桁ごとに単位が変わっていき(万進法)、1068無量大数が最大となっている。一から無量大数までの数え方は中国の算術書を基に江戸時代に吉田光由が執筆した塵劫記に記されている。初期の版(1627年,寛永4年)では数によって万進法になっていなかったが、1634年(寛永11年)の版ですべての数字が万進法に統一されている。これを上の表にあてはめている。ところで101037.52を表す不可説不可説転は塵劫記とは別に華厳経に登場する数詞で、とてつもなく大きな数字を示すことで悟りの功徳の大きさを表している。ただし、とてつもなく大きな数字だが計算法が経典に示されているので具体的な数値を算出することができる。*1 華厳経に登場する不可説不可説転より下の数詞は命数法 - Wikipediaの仏典の数詞に表記されている。107(倶胝(くてい))から肩の数が倍々で上がっていく。

5. 特に大きい数の表記

 指数で表現する場合、特にGoogolplexのように多重に肩に数値が乗るような場合、数値がだんだん小さくなって表記上都合が悪い。そこでクヌースの矢印表記というものがある。まずべき乗、例えばabを矢印記号を用いてa↑bと表記する。2重に肩に数値が乗るような場合abcではa↑b↑cとなる。この表記法を利用するとGoogolplexである1010100は10↑10↑100となる。また表の一番下の第2スキューズ数101010964は10↑10↑10↑964となる。さらにこの表記法だと、肩に多重に数値が乗る場合はだんだん矢印が増えて表記自体が長くなる。そこで指数計算の反復回数をあらわす表記として2重矢印を用いたタワー表記が考えられている。例えば2↑↑3は222=24=16となる。これを使えば10↑↑5などとすると第2スキューズ数より遥かに大きい数字を表すことができる。詳しくはクヌースの矢印表記 - Wikipedia参照。

6. 大きい数の実用性

 いくらでも大きな数というのは考えられるが、実際のその桁の数値を使うかどうかという実用性について述べたい。人間が指をさすなどで数えられる数という点では100から1000ぐらいだろう。(それ以上だと集中力がもたない)お金の支払いなどは、個人のレベルだとせいぜい100万オーダーで、仕事などで帳簿上で向き合う数字は億単位ぐらいまで。コンピュータ関連だとPCのHDDの容量が数TB(1015)で、データセンターでもPB(1018)オーダー。科学技術計算で最も大きい数としてはアボガドロ数の6.02 x 1023だろう。天文学の分野では、文字通り天文学的な大きな数字が登場する。太陽の質量は1.989x1030kgであり、さらにその数十億倍の質量1039kgが巨大ブラックホールの質量に相当する。天文関係の研究では取り扱うこともある数になる。それよりも大きな数では、将棋の取りうる組み合わせの総数10220など組み合わせ爆発により、ゲームや計算の複雑さを表現に使われる。さらにその上の数、Googolplexや不可説不可説転のオーダーを遥かに超える数値として素数研究の分野でスキューズ数というものがある。(解説は第34話 スキューズ数 - Qiitaなど)また表の一番下に載せたのは上のタワー表記からさらに↑を3つ設けた表記で3↑↑7625597484987と等価で、3の指数計算を7625597484987回繰り返して得られる数で、10の指数では表現できないほど大きい。このような数はグラハム数と呼ばれている。(詳しくはグラハム数 - Wikipedia)このグラハム数も数学の研究で登場する数(関数)で、数学の研究では意味のある大きな数になっている。