今回はTexによる数式表現方法として1階線形微分方程式の解について紹介したい。
1. 1階微分方程式
最も基本的な微分方程式として以下の1階線形微分方程式について考える。
[tex: \displaystyle \frac{dy}{dx} = \alpha y ]
次のように変形して積分式にする。
[tex: \displaystyle \int \frac{dy}{y} = \alpha dx ]
上の積分は容易に実行できて
[tex: \displaystyle \ln {y} = \alpha x + C ]
Cは積分定数となる。y=…となるように指数をとると
[tex: \displaystyle y=\exp (\alpha x +C)]
exp(C)の部分を改めてCと書き直すと
[tex: \displaystyle y= C_{0} \exp (\alpha x)]
具体的にC0を得るには初期条件 y(x=0)=C0が与えられると確定する。
2. 社会科学における1階微分方程式の応用
社会科学での応用例として増加速度が生物の個体数に比例するというマルサスモデルが知られており、
[tex:\displaystyle \frac{dP}{dt} = m P ]
[tex: \displaystyle P(t)=P_{0}\exp (mt) ]
P(t)は個体数(人口)、tは時間、mは係数(マルサス係数)、P0はt=0での個体数となる。mが正であれば指数関数的に個体数が増えていくという結果になる。
2. 物理学における1階微分方程式の応用
ニュートンの冷却法則は液体や気体など(媒質)に置かれた固体の固体から媒質への熱の移動速度は、固体の表面積と固体と媒質の温度差に比例するというものである。これを微分方程式であらわすと
[tex:\displaystyle -\frac{dQ}{dt}=\alpha S (T-T_{m} )]
Qは固体の熱量、Tは固体の温度、Sは固体の表面積、Tmは媒質の温度、αは熱伝達率で固体の表面形状や媒質により決まる定数である。
ここで温度と熱量は、固体の熱容量Cを用いてCΔT=ΔQという関係があるため
[tex: \displaystyle -C\frac{dT}{dt}=\alpha S (T-T_{m} )]
さらに温度差Td≡T-Tmを新しく定義すると、
[tex: \displaystyle -C\frac{dT\_{d}}{dt}=\alpha S T\_{d} ]
Tmは定数のため微分するとゼロになる。この微分方程式は上の解がそのまま当てはまり、整理すると以下のようになる。
[tex: \displaystyle T\_{d}(t)=T_{d} (0) \exp ( -\frac{\alpha S T\_{d}}{C} t)]
ここでTd(0)はt=0での固体と媒質の温度差を意味する。元の固体の温度で評価したい場合はTdを定義した通りに戻して
[tex: \displaystyle T(t)=(T\_{0}- T\_{m}) \exp ( -\frac{\alpha S (T-T\_{m})}{C} t) + T\_{m} ]
T0はt=0での固体の温度を示す。
3. まとめ
今回示した例に限らずある物理量が指数関数的に増減する場合は、今回示した微分方程式のモデルが当てはまることが多く、また微分方程式としてももっとも基本的なものの1つである。