つれづれなる備忘録

日々の発見をあるがままに綴る

Texによる数式表現28~フーリエ変換公式

 以前積分変換について取り上げたが、今回はその1つで最も使われているフーリエ変換の公式についてのTeXによる数式表現について紹介する。今回はフーリエ変換の基本的な公式のみを取り上げ、具体的な関数の変換例はこのシリーズの次回の記事に示すことにする。

atatat.hatenablog.com

1. フーリエ変換

フーリエ変換は1次元だと信号周波数解析、応答解析など、2次元だと画像処理など工学分野だとあらゆるところに用いられている最も基本的な数学ツールである。似たものとしてフーリエ級数展開は、(時間的)連続関数を基本周波数の整数倍の正弦、余弦関数の展開式として変換するが、フーリエ変換は(時間的)連続関数を連続する角周波数を引数とする関数へ変換する。デジタルデータを扱う場合は、FFT(高速フーリエ変換)がよく使用されるが性質としてはフーリエ変換と似通っている。

フーリエ変換にはいくつか定義があるが、今回は下記のものを用いる。

[tex: \displaystyle  \mathcal{F} \\[ f(t) \\] =\hat{f(\omega)}= \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int^{\infty}_{-\infty}  f(t) e^{-i\omega t} dt]

 \displaystyle  \mathcal{F} [ f(t) ] = \hat{f}(\omega)= \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int^{\infty}_{-\infty}  f(t) e^{-i\omega t} dt

また変数は、信号解析を想定して時間t, 周波数fに対して角周波数ω=2π fを用いている。フーリエ変換を意味する記号は\mathcal{F}、および文字にアクセントを付加する\hat{f}(\omega)を用いる。

2. フーリエ変換の公式

線形性は、線形演算子と呼ばれるものはこの法則が成立する。

[tex: \displaystyle  \mathcal{F} \\[ af(t)+bg(t) \\] = a  \hat{f}(\omega)+b \hat{g}(\omega)]

 \displaystyle  \mathcal{F} [ af(t)+bg(t) ] = a  \hat{f}(\omega)+b \hat{g}(\omega)

シフト則は時間領域のずれが周波数上では位相ずれのような効果になる。なお|e-iωa |=1なので大きさは不変。

[tex: \displaystyle  \mathcal{F} \\[ f(t-a) \\] = e^{-i \omega a}  \hat{f}(\omega)]

 \displaystyle  \mathcal{F} [ f(t-a) ] = e^{-i \omega a}  \hat{f}(\omega)

シフト則での変換後の関数の形でフーリエ変換をすると、シフト則での変換前の関数の形になる。(双対性)

意味としては時間領域の信号に三角関数で変調(ei2π a t=cos(2πat)+isin(2πat))すると周波数軸上で変調した周波数分だけずれるということを示している。

[tex: \displaystyle  \mathcal{F} \\[ e^{i 2\pi a t}f(t) \\] =   \hat{f}(\omega - 2\pi a)]

 \displaystyle  \mathcal{F} [ e^{i 2\pi a t}f(t) ] =   \hat{f}(\omega - 2\pi a)

スケール則は、例えばa>1だと周波数上では圧縮されa<1だと逆に伸ばされる。これは信号にFFTを適用するときに、周波数分解能を高く取りたい場合は、実時間信号のレコード時間を長くとらなければならないということに対応する。

関数の表記で括弧を引数にサイズを合わせて表記したい場合は\left( \right)などを用いる。固定サイズでも違和感はないので今回は固定サイズで単に( )を用いている。

[tex: \displaystyle  \mathcal{F} \\[ f(at) \\] = \frac{1}{|a|}  \hat{f}(\frac{\omega}{a})]

 \displaystyle  \mathcal{F} [ f(at) ] = \frac{1}{|a|}  \hat{f}(\frac{\omega}{a})

微分公式

[tex: \displaystyle  \mathcal{F} \\[ \frac{d^{n}f(t)}{dx^{n}} \\] = ( i\omega )^{n}  \hat{f}(\omega)]

 \displaystyle  \mathcal{F} [ \frac{d^{n}f(t)}{dx^{n}} ] = ( i\omega )^{n}  \hat{f}(\omega)

微分公式の双対

[tex: \displaystyle  \mathcal{F} \\[ t^{n}f(t) \\] =  i^{n}  \frac{d^{n} \hat{f}(\omega)}{d \omega^{n}}]

 \displaystyle  \mathcal{F} [ t^{n}f(t) ] =  i^{n}  \frac{d^{n} \hat{f}(\omega)}{d \omega^{n}}

畳み込み(Convolution)はかなり使用頻度高い概念で、信号応答解析などによく使われる。畳み込みの演算はアスタリスク*で表記されるが、TeX表現でもそのままアスタリスクを用いている。

[tex: \displaystyle  \mathcal{F} \\[ f*g \\] = \sqrt{2\pi}\hat{f}(\omega)\hat{g}(\omega)]

 \displaystyle  \mathcal{F} [ f*g ] = \sqrt{2\pi}\hat{f}(\omega)\hat{g}(\omega)

畳み込みの定義は

[tex: \displaystyle f*g(x)=\int^{\infty}_{-\infty}f(x)g(x-\xi)d\xi]

 \displaystyle f*g(x)=\int^{\infty}_{-\infty}f(x)g(x-\xi)d\xi

畳み込みの双対

[tex: \displaystyle  \mathcal{F} \\[ f(t)g(t) \\] = \frac{(\hat{f}*\hat{g})(\omega)}{\sqrt{2\pi}}]

 \displaystyle  \mathcal{F} [ f(t)g(t) ] = \frac{(\hat{f}*\hat{g})(\omega)}{\sqrt{2\pi}}

3. まとめ

 今回はフーリエ変換公式のTeX数式表現について紹介しつつ、公式の用途・意味を補足した。フーリエ変換の公式はFFTにも概略適用(厳密には連続と離散の違いがある)できるため、信号解析や信号処理を取り扱う上でヒントになることが多いと思う。