つれづれなる備忘録

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国際単位系(SI単位系)

1. 国際単位系とは

 国際単位系またはSI単位系( Système International d'unités)とは世界中で使用される世界共通の単位系である。一方で独自に用いている単位としてはアメリカで使用されているヤードポンド法で、長さがインチ、フィート、マイルや重量ではポンドが知られている。学術論文*1や国際的な規格等の文書では、SI単位系を使用することが求められる。またSI単位系は、MKS単位系(長さ:メートルm、質量:キログラムkg、時間単位:秒s)を採用している。なおMKS単位系以外はCGS単位系(長さ:センチメートルcm, 質量:グラムg,時間単位:秒s)が知られている。

2. SI基本単位

7つの基本量として長さ、質量、時間、電流、熱力学的温度、物質量、光度がある。2019年のSI基本単位の再定義により、すべての基本量は物理量または物理定数と結びついた量として定義された。 基本量の定義に使われる物理量は以下の7つである。

物理量 記号 数値 単位
セシウムの超微細構造の遷移周波数 ΔνCs 9192631770 Hz (s-1)
真空中の光速度 c 299792458 m s-1
プランク定数 h 6.62607015×10-34 J s
電気素量 e 1.602176634×10-19 C
ボルツマン定数 k 1.380649×10-23 J K-1
アボガドロ定数 NA 6.02214076×1023 mol-1
発光効率 Kcd 683 lm W-1

これらを使って現在では以下の7つの基本量が定義されている。なおSI単位系では上記の値が固定の定義値になっており不確かさはない。(実測値ではないことに注意)以下に示すように、その時代の技術力により、より不確かさが小さいものを基本量の定義として用いられていることがわかる。

長さ:メートル(m)

 真空中の光速度cを用いて真空中で1秒間の299792458分の1の間に光が進む距離。1秒間はΔνCsから定義される。(1983) 以前の定義はクリプトン-86が真空中で発するオレンジ色‐赤色の発光スペクトルが示す波長の1650763.73倍(1960)。白金90%とイリジウム10%の合金を用いたメートル原器を0°Cにしたときの長さ(1889)

質量:キログラム(kg)

 プランク定数6.62607015×10-34 Js から定まる質量。Jsはkg m2s-1と等しい単位で、mはc、sはΔνCsから定義される。(2019) 以前の定義は直径・高さともに約39mmの円柱形の、プラチナ90%、イリジウム10%からなる合金をキログラム原器として定義する。(1889)

時間:秒(s)

 セシウム133原子の基底状態の2つの超微細構造準位間の遷移に対応する放射の周期(1/ΔνCs)の9192631770倍に等しい時間。(1967)以前の定義は1太陽年の 1/31556925.9747(1956)

電流:アンペア(A)

 電気素量を1.602176634×10−19 クーロン(C)とすることによって定まる電流。CはA sと等しい単位でsはΔνCsから定義される。(2019)以前は 真空中に 1 メートルの間隔で平行に配置された無限に小さい円形断面積を有する無限に長い二本の直線状導体のそれぞれを流れ, これらの導体の長さ 1 メートルにつき 2 × 10−7ニュートンの力を及ぼし合う一定の電流である。(1948)

熱力学的温度:ケルビン(K)

 ボルツマン定数を1.380649×10-23 J K-1 とすることによって定まる温度。単位J K-1はs−2·m2·kg K−1と等しい単位でmはc、sはΔνCs、kgはhから定義される。(2019)以前の定義は熱力学温度の単位、ケルビンは、水の三重点の熱力学温度の1/273.16である。(1954)

物質量:モル(mol)

 6.02214076×1023 の要素粒子を含む。この数値は単位mol−1による表現でアボガドロ定数 NAの固定された数値であり、アボガドロ数と呼ばれる。(2019)以前の定義はモルは、0.012 キログラム(12グラム)の炭素12の中に存在する原子の数と等しい要素粒子を含む系の物質量(1971)

光度:カンデラ(cd)

 周波数540×1012ヘルツ(Hz)の単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が1/683ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度。単位はlm W-1で cd sr W−1または cd sr kg−1 m−2 s3と等しい単位でmはc、sはΔνCs、kgはhから定義される。(1979)以前の定義はカンデラは、101325ニュートン毎平方メートル(N/m2)の圧力の下で、白金の凝固点の温度(1769°C)における黒体の600000分の1平方メートルの表面の垂直方向の光度(1967)

3. まとめ

 2019年の改定では、唯一人工物であったキログラム原器に代わり物理定数であるプランク定数による定義に置き換えられた点が大きな変更であった。また電流、温度、物理量の定義もそれぞれ電気素量、ボルツマン定数アボガドロ数から定義されることになり、以前の定義とは大きく変更されている。

*1:分野ごとに慣習的に使われる非SI単位は認められる場合がある