1. 電磁気に使われるCGS単位系
前回は電磁気で使用されるCGS単位のうちCGS静電単位系(CGS-esu)を紹介した。今回はCGS電磁単位系(CGS-emu:electromagnetic system of units)について紹介する。
2. 電磁単位の導出
静電単位のときの真空の誘電率ε0=1に対して電磁単位では真空の透磁率μ0=1 (SI単位系では&mu0=4π x 10-7)としている 距離がr離れた平行に電流が長さワイヤに流れているときに長さl当たりにかかる力(CGS-emu)は
となる。このときワイヤ1cm間で長さ1cm当たり力が2dyn(=2 x 10-5(N))となるように等しく流れている電流量(I=I1=I2)を1 abA (アブアンペア,電磁単位)と定義する。なおSI単位系では
において距離1m離れており1Aの電流が等しく流れているとき長さ1m当たりにかかる力はF=2 x 10-7(N)となる。(∵ μ0=4π x 10-7) 上の2つの式を比較するとemuをSI単位の変換するには、1abA=10Aということがわかる。静電単位系では電荷であるstatCが基本量になっていたが、電磁単位系では電流であるabAが基本量になっている。
3. CGS電磁単位
電磁単位(abA)とCGS単位系を組み合わせたCGS電磁単位をSI単位と併記して下にまとめた。なおSI(組立)単位については、過去記事も参照。
物理量 | 名称(SI) | SI組立単位 | EMU単位 | EMU組立単位 |
---|---|---|---|---|
電荷 | C | s·A | abC | s·abA |
電流 | A | - | abA | - |
電圧 | V | W/A | abV | erg/abC |
電場 | - | V/m | - | abV/cm |
電束密度 | - | C/m2 | - | abC/cm2 |
電気双極子モーメント | - | C· m | - | abC·cm |
磁気モーメント | - | A· m2*1 | - | abC·cm2 |
磁束 | Wb | V·s | Mx or abWb | abV·s |
磁束密度 | T | Wb/m2 | G or abT | abWb/cm2 |
磁界強さ | - | A/m | Oe | statA/cm (x 4π) |
電気抵抗 | Ω | V/A | abΩ | abV/abA |
電気抵抗率 | - | Ω·m | - | abΩ·cm |
静電容量 | F | C/V | abF | abC/abV |
インダクタンス | H | Wb/A | abH | abWb/abA |
CGS-ESUと同様に一部SI単位と定義が異なるがSI組立単位とEMU組立単位は一致しており、abAを10Aに置き換えてEMU組立単位に従って演算すれば、SI単位系に変換することができる。 abAなど馴染みが薄い単位があるが、磁界強さエルステッド(Oe),磁束密度ガウス(G)は慣用的によく使われる単位である。なおこれらのSI単位との変換は1(A/m)=4π x 10-3 (Oe), 1(T)=104(G)である。
4. まとめ
今回は電磁気で使用されるCGS単位としてCGS電磁単位系(CGS-emu)について紹介した。次回は最後に残ったCGSガウス単位系(CGS-gauss)について取り上げる予定である。
*1:E-B対応