Texによる数式表現40~楕円積分
今回はTexによる楕円積分の数式表現方法について紹介したい。楕円積分の応用としては、コイルや振り子があり、また多くの数値計算ソフトウェアでも特殊関数の一つとして取り扱われることが多く馴染みはあるかと思う。
1. 楕円関数の定義(ヤコービの標準形)
楕円積分は第1種、第2種、第3種があり平方根の積分で表されるが初等的には解けない。 ヤコービの標準形といわれるものでは第1種楕円積分は
[tex: \displaystyle F(x,k) = \int\_{0}^{x} \frac{dt}{\sqrt{1-t^{2}}\sqrt{1-k^{2}t^{2}}}]
第2種楕円積分は
[tex: \displaystyle E(x,k) = \int\_{0}^{x} \sqrt{\frac{1-k^{2}t^{2}}{1-t^{2}}}dt]
第3種楕円積分は
[tex: \displaystyle \Pi(a;x,k) = \int\_{0}^{x} \frac{dt}{(1-at^{2})\sqrt{(1-t^{2}) (1-k^{2}t^{2})}}]
2. 楕円関数の定義(ルジャンドルの標準形)
ヤコービの標準形においてとおくとルジャンドルの標準形になり、こちらの定義の方が表現がすっきりしており、見かけることも多いと思う。
[tex:\displaystyle F(\phi,k)=\int\_{0}^{\phi} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^{2}\sin^{2}\theta}} ]
第2種楕円積分は
[tex:\displaystyle E(\phi,k)=\int\_{0}^{\phi} \sqrt{1-k^{2}\sin^{2}\theta} d\theta ]
第3種楕円積分は
[tex: \displaystyle \Pi(a;\phi,k) = \int\_{0}^{\phi} \frac{d\theta}{(1-a \sin^{2}\theta)\sqrt{(1-t^{2}) (1-k^{2}\sin^{2}\theta)}}]
3. 特定のkの場合
k=1やk=0の場合など特定のkの値に対しては楕円積分は初等関数で表すことができる。
<div>[tex:\begin{eqnarray} F(x,0) &=& \sin^{-1} x \\ F(x,1) &=& \tanh^{-1}x \end{eqnarray}]</div>
<div>[tex:\begin{eqnarray} E(x,0) &=& \sin^{-1} x \\ E(x,1) &=& x \end{eqnarray}]</div>
4. 完全楕円積分
ルジャンドルの標準形においてθ = π/2まで積分を行う楕円積分をそれぞれ第1種完全楕円積分、第2種完全楕円積分と呼ぶ。 第1種完全楕円積分は
[tex:\displaystyle F(\frac{\pi}{2},k)=K(k)=\int\_{0}^{\pi/2} \frac{d\theta}{\sqrt{1-k^{2}\sin^{2}\theta}}]
また によるテイラー展開から
[tex: \displaystyle K(k)=\sum\_{n=0}^{\infty} \left( \frac{(2n-1)!!}{(2n)!!} \right)^{2} k^{2n} ]
なお!!は2重階乗を表し
また(-1)!!=1と定義する。
同様に第2種完全積分は
[tex: \displaystyle E(k)=\sum\_{n=0}^{\infty} \left( \frac{(2n-1)!!}{(2n)!!} \right)^{2} \frac{k^{2n}}{1-2n} ]
5. 楕円積分の応用
有限長のソレノイドコイルのインダクタンスLを計算する際に使われる長岡係数は楕円積分により導かれる。
[tex:\displaystyle L=K\_{N}\frac{\mu\pi r^{2}N^{2}}{l} ]
ここでlはソレノイド長、rはソレノイド半径、Nはコイル巻き数、μは透磁率、
KNは長岡係数で
tex:\displaystyle K\_{N}=\frac{4}{3\pi \sqrt{1-k^{2}}}\left( \frac{1-k^{2}}{k^{2}}K(k)-\frac{1-2k^{2}}{k^{2}}E(k)-k \right) ]
kとr,lの関係は以下のようになる。
[tex: \dfrac{2r}{l}=\dfrac{k}{\sqrt{1-k^{2}}}]
他の例として振り子の問題を解くときに という近似を使わずに単振り子の周期を求めると
[tex: \displaystyle T=4\sqrt{\frac{l}{g}} K(k) ]
でαは振り子の最大振れ角である。
なお高校物理などに出てくる近似を用いた場合の周期は
[tex:\displaystyle T\_{0}=2\pi\sqrt{\frac{l}{g}} ]
楕円積分はその名の通り楕円の弧長を求めることができる。
[tex: x^{2}+ \left( \dfrac{y}{c} \right)^{2}=1]
の弧長Lは
[tex: \displaystyle L = \int \sqrt{\frac{1-k^{2}x^{2}}{1-x^{2}}}dx]
離心率は となる。